コラム

2022-09-14 00:00:00

円急落に思う in タンザニア

8月下旬から2カ月間の予定で、タンザニアのダルエスサラームに来ています。今回の出張、うっかり成田で円をドル転してくるの忘れてしまい、「まぁ着いてから両替すればいいか」と割り切って現地入り。しかし先日地場銀行に両替に行ったところ、何と訪れた銀行が3行とも「日本円は取扱っていない」との回答。たしか前週までは店先のボードに円の為替レートも表示されていたのに...。これは恐らくここ最近の円急落が嫌気されているためで、そのあと行ってみた両替店でも円は取扱っていたものの、¥1.00=16(タンザニア)シリング台半ばの市場レートに対して、¥1.00=10シリングでしか買い取ってもらえず、もう「円なんか持って来るな」と言わんばかり。ここにきて在外邦人の利便性にまで影響が出ている円の下落ぶりをたっぷり思い知らされる羽目になりました。

銀行や両替店によるこうした対応の直接的な原因は、為替レートの「水準」ではなく「変動幅」でしょうから、過渡期的な反応だと思いたいところ。ただそもそもの背景ということで考えると、日本経済が

     付加価値を生み出せていない
≒  経済成長できていない
→ 利上げ余地が無い
→ 欧米の利上げで内外金利差拡大
→ 円安圧力増大

という循環から抜け出せていないということでしょうから、大きな意味では成長から取り残された経済そのものにも原因があると考えることができるでしょう。

他方、こと円安の話になるとすぐ「輸出企業が潤って調整メカニズムが働くから心配ない」みたいな論調が出てきがち。しかし長い目で見て、生み出せる付加価値が伸びていない経済が、そういう従来型の調整で新たな均衡点に落ち着けばいいというだけの話なのかは、根本から考え直す必要があるのではないでしょうか。このことは安倍政権が三本目の矢を撃ち損じて以降ずっと言い続けてきましたが、ついにそのしわ寄せが抜き差しならないところまで来てしまっているように思えてなりません。(浦出)
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